2013/12/29

ドトール


今年、国分寺駅のドトールが閉店しました。


・・・今年一年振りかえって、そのハナシ?


って感じもしなくはないですが、
今日、ふと、また思い出しちゃったもんで・・・

国分寺で仕事を始めてかれこれ7年。
仕事の後の帰宅前にコーヒーを、
深夜に帰れず仕事場に泊まり朝ご飯にモーニングを、
暇つぶしに、メヘンディの図案描きに、

今は無き海老入りミラノサンドBに関しては
一体いくつ食べたのか数えるに及びません。

まあとりあえず、ものすごく通ってたってことですよ。

もともとドトールの張り切りすぎてないインテリアとか
2oo円と安価なクセの無いコーヒーの味とか
オヤジカフェとも呼ばれる客層の広い庶民の憩いの場的な雰囲気とか
そんなドトールのことは全体的に好きではあるのですが

国分寺ドトールに関してはその適度な広さといい
解放感がある席の配置といい
喫煙者に対しての配慮の適度さといい

なんてゆーか、私の中では
ベスト・オブ・ドトールといっても過言ではない
国分寺ドトール。
もう無いけど。

ちなみに一番お気に入りの席は喫煙席と壁一枚を挟んだ禁煙の椅子席でした。

隣で宗教の勧誘を受けている女性がいたこともありました。
隣でカップルが喧嘩を始めたけれど、
聞き耳をたてても会話が韓国語で全くわからないこともありました。
競馬新聞をひろげるおっさんも、
問題集と格闘する男子学生も、
ひとつのテーブルに椅子を持ち寄り話し込むおばちゃんたちも、
なんだかこの国分寺という町の縮図のようでおもしろかったのにねえ・・・

ちょっと小腹がすいたときに食べるパン類も美味しかったのに。
他のコーヒーショップに比べて日本的っていうかちょっと味も繊細でさ。
スタバとかタリーズのサンドイッチって、
なんか大味っていうかエサっぽい味がして好きじゃないんだよね。

春先にこのドトールが閉店することにショックを受け、
たびたびツイッター等で呟いていたら

「マエダさ、ドトールのこと気にしすぎじゃない?」

なんて友人に言われちゃったりしてね・・・

イヤイヤ、絶対、
他にもこのドトール閉店にショックを受けている国分寺市民がいるはずだから!!

と思い、ネットで「国分寺・ドトール閉店」と検索してみたら
案の定でてきましたよ、
国分寺ドトールの閉店を嘆く人々の声が。

「マイホーム、ドト」

とまで呼ばれてたよ、ある人には。

中には「なぜ閉店するんですか!?」と駅ビルに問い合わせた人もいるらしく、
駅ビルからの答えとしては「来春からの契約が交わされなかったためです、ご理解ください。」という
答えになってるんだかなってないんだかわからない答えが返って来た模様・・・

まあたぶん、家賃があがって撤退したってところだろうな・・・

知らないけどさ・・・

これだけ愛されてることを果たして知っていたのか
国分寺ドトール。

ドトールの後釜タリーズにはどうも馴染めず、
なんかハリボテ的な内装がイヤなんだよね・・・
最近は改装した西国分寺のドトールを愛用中です。

ちなみにどんな駅に降りても大概、
徒歩圏内にドトールはあることが多いので
知らない駅に降りる度についドトールを探してしまう私。

なぜこんなにドトールが好きなのか自分でもよくわからないのですが

いや、ドトールが好きというより
今は無き国分寺ドトールにドトール全てを好きにさせられたというか

それにしても銀座ル・カフェ・ドトールはちょっと高めのお値段のせいか
他店ドトールよりカップ自体が大きいのですが、
大きめカップでたっぷり飲むドトールのコーヒーは何故か不味い。


なぜだろうね。





2013/12/22

意味



ネパール語みたいなタトゥーをいれました。

・・・てゆーか、何語?

実はよくわかんないんだよね。
字ヅラの綺麗さに一目惚れして決めちゃったから。

ネパール仏教のこと調べてたら出て来た文字だから、
多分そっち系の言葉だと思うのだけど、
なにせインターネットの情報って半分はウソだと思ってるからなあ。
もっともらしく書いてあっても鵜呑みにはできないんだよね。


「ネパーリーかチベタンだとは思うんですけどね。
 サンスクリットやデーバナーガリーとは接頭辞部分の変化が少し違いますね。
 いずれにせよ、あの辺に無数に存在するサンスクリット系グループの
 ひとつであることは確実だと思いますが。」


トライバル専門の彫り師のオーシマさんに聞いたら、
まあどの国の言語であるかくらいはわかったので自分的には納得して彫ることにしました。


「この、字体がシャープで気に入ったんです。」

「ああ、板文字の字体ですね。筆じゃなくて、こう、板で書くんですよ。
 だからこういうビシっとした感じになるんですよね。」


へえ〜 そうなんだ。

なんかさ、たまにいるじゃない。

変な漢字を身体に彫っちゃう外国人のひと。

「悪」とか「謎」とか「台所」とか「生活」とか


あの人たちの気持ち、なんかわかるな〜(笑)


知らない言語の文字って、ただの記号に見えるんだよね。
で、記号特有のシンプルさが綺麗だったりしてさ。
漢字なんか特に、記号なんだけど複雑で絵のような要素もあるから、
外国人の人からみたら、漢字ってかなりファッショナブルでかっこいいと思うわ。

日本人の私からすると、うっすら意味のわかる英語のアルファベットよりも、
アラビア語とか昔のエジプト文字とかが絵的にいいよね。
意味がどうこうじゃなくて、
記号としての実用性を含んだデザインの綺麗さみたいのが、文字にはあるんだよね。
字体にもよるけどさ。

以前、バリ人の友人に
「ナツコと言う漢字はどう書くんだ、教えてくれ、脇腹に彫るから。」
と言われて教えたら、
本当にきっちりとした綺麗な明朝体で「奈津子」と彫ってきてびっくりしたことがあったけど、
まあ、彼らにしたら私が意味のよくわからないネパール語を身体に彫るのと
同じようなもんなんだろうねえ。

意味がわかる人からしたらバカみたいなんだろうけどねえ(笑)
だけど、逆に意味がわかるひとにはもう、
その文字のデザインとしての美しさはわからないのかもしれないね。

意味付けしたものから意味を剥ぎ取って見る、ということはとても難しいから。


・・・

てゆーかさ、もし、私が彫ったネパール語みたいなのがそれこそ
漢字タトゥーにありがちな「台所」とか「死」とか「特特」とか「因果応報」
みたいなもんだったらどうしよう・・・


・・・てか、「トマト」とか「チキンラーメン」とか「早起き」みたいな意味だったらどうしよう!!



まあ、実際、それならそれでいいんだけどね〜。
もし、自分の身体に美しい字体で「チキンラーメン」なんて言葉が彫られてたら、
何かから自由になれる気がするわ(笑)



息苦しいからね、

時に、意味付けの世界は











2013/12/13

頭痛


初体験かもしんない。

昨日、なかなかにすごい頭痛を経験しました。

まあ、今までもよく頭痛はあったんだけど、
今回はなんだかちょっとびっくりするくらいイタかったんだよね。

朝からびみょ〜にジクジク頭重いなーとは思っていたんだけど
重い荷物を持って仕事場に到着するやいなや


・・・イッッテ!!!


バファリン2錠飲んだけど効かないし、
側頭部を起点になんだか顔の方まで痛いような感じになってきて、
吐き気するし、しまいには寒気まで。
肩こりのせい?と思って肩を自分で揉んだら更に頭痛は急激に悪化。

起き上がると辛いので
その後予約していた歯医者をキャンセルして、
そのまま部屋でひとりゴロ寝していた平日の真っ昼間・・・。

なに?

なんなのコレ?

なんかヤバい感じがしてきたので、
寝っ転がりながらiPhoneで「頭痛」についての項目を検索。

鎮痛剤が効かないってのが、なんか今までと違うんだよね・・。
今まではバファリンかロキソニン一錠で痛みは取りあえず消えてたのに。

「薬が効かない 頭痛」

で検索したら、出てきました。


え?

なんかちょっとびっくりした。


「片頭痛」


・・・だって。


なに?片頭痛って、言葉だけはよく聞くけど
こんなにスゴいの?

片頭痛って辛いって聞いたことあるけど、ホントに辛いね、コレ。
こんなの定期的にこられたらちょっと堪んないわ。
こんなんこられたら、間違いなく仕事できないし。

で、なにやらこの片頭痛ってやつは、市販の頭痛薬が効かないらしいね。

いわゆる普通の頭痛っていうやつは頭部周辺の血流が悪くなることで起こるらしいのだが
この片頭痛は原因が全く逆らしく、
頭の血管が拡張することで起こるんだそうな。

ああ、そうか、だから、自分で肩揉んだら逆効果だったのね・・・
三叉神経の方まで痛みがくるらしいから、なるほど顔までじんじんしてたしなあ。
重い荷物を肩にかけてたのも、もしかしたら引き金になったのかもね。

吐き気も片頭痛にはよくあることらしい。
頭痛の痛みを感じる神経と、吐き気を感じる神経がとが近いところにあるから、
頭痛の痛みが吐き気を誘発しちゃうんだって。


で、片頭痛には片頭痛用の鎮痛剤を病院で処方して貰わなきゃいけないらしい。

・・・めんどくさいな。

やだな。慢性化しませんように。

ネットで色んな片頭痛に関するサイトを見て回ったら
おもしろかったのが、「チョコレート」は片頭痛には良く無いってこと。
血管を広げちゃうのかな。
たしかにその日も朝、チョコ食べたな。

で、「コーヒー」は血管を収縮させるから、片頭痛の予防にいいらしい・・

とりあえず頭の後ろを氷で冷やしながらうたた寝してたら、
ものの数十分で急に痛みは楽になりました。

寝起きはチョコレートとコーヒーでぼんやりしていた頭に喝。
この組み合わせ、昔から好きなんだよね。

とりあえず、この片頭痛、
ストレス溜めないってことが肝心らしいです。













2013/12/08

青色


友人を訪ねて山梨に行ってきました〜。

意外と山梨って近いのね!
立川から甲府まで特急で一時間で着いちゃいました。

「どこに行きたい?」

なんて訊かれても全然わかんないから、行き先は友人におまかせ。

「ソフトクリームを食べよう!」

ということでまずは清里へ。
天気に恵まれたおかげで美しい富士山にもお目にかかれました。



ソフトクリーム屋さんの横には足湯スペースも。
勿論、入る。


これ、最高!


*photo by my friend*

足湯の後は美し森の展望台へ。
霞がかった富士山は浮世絵のように清々しい青色。



富士山って今まで全く興味がなかったけど(笑)

青色の富士山はとっても綺麗。

浮世絵のあの清冽な青色は、
やっぱり日本の空気と土地の色なんだなって実感しました。


photo by my friend*

友人の運転で気楽にドライブ。

清里→美し森から温泉に入ろう!ということで「みたまの湯」

小腹が減ったのでオヤツにイオンで銀ダコ食べて

夜は「奥藤」本店で鶏もつ煮を食べる。



ウマ!!

こっくりした甘さが美味でした。
アマジョッパイ、ってゆーより甘い、って感じ。
センスのいい味だなあ。

なんだか予想外にのんびり色々楽しめた山梨日帰りの旅でした。

冬は空気が澄んでて気持ちがいいから、
今の時期は意外と国内旅行にもいい季節なのかもしれないね。













2013/10/05

部屋


実は飽きずにやってます・・・

革いじり!

先月から三回に分けて神奈川の革職人さんのところに
レザークラフトを習いに行ってました。

革職人のワタツさんはただでさえ知識も技術もスゴいのに、
その上私のどんな小さな質問にもひとつひとつ丁寧に答えてくれる超有り難い人。

ワタツさんの仕事は細部の処理とか、
いかにも男系なのに適度に品のあるデザインとか
こだわりポイントがなんだかとても私のツボにハマるので、
なんだか聞きたいことがいっぱいあって、質問ばっかしてたような・・

質問ばっかしてたくせにいくつか忘れてたりしてね・・・

スミマセン・・・

とりあえず、三回の講習でなんとか無事に革財布をひとつ、完成させました!

やったー!

先日の教室では私の作業が手間取り
長々と作業部屋にお邪魔させて頂きましたが

なんだか、男の人の作業部屋って落ち着くんだよね〜。

道具がごちゃごちゃ置いてあるとことか
雑然とした感じが、なんかスキなんだよね。

落ち着くんだよね〜。

なんでかわかんないんだけど、
そういう部屋にいると外の世界から遮断されてる気がして、
時間とかも気になんなくなるんだよね。

不思議な場所です。
男の作業場。

自分の作業机の上にモノが散らかってても
「邪魔だな・・汚いな」としか思わないのだけどね。

昔、彫刻家の彼氏の散らかったアトリエがすごくスキで、
「あなたよりあなたのアトリエが好き」
とか彼に言って怒られたこともあったっけな・・・(笑


まあそんなかんじで

居心地のいいお部屋で
できあがったよ!の写真をバチリ。


ショートウォレット完成!



***五助屋レザーさんHP***







2013/09/24

宗教


私は無宗教だけど、たまに無性に宗教というものに入りたくなる時がある。

でも、入らないけどね。笑

いや、入りたく無いわけじゃないんだよ。
入りたいけどはいれないってゆーか

だって自分にしっくりくる既存の宗教に、出会ったことがないからね。


宗教に疎い日本人とはいえ産まれた時から寺だの神社だのに行くんだから
結局は仏教系だ神道系だなんだって世間では言ったりもするけれど
私は海外で外国人に自分の宗教を聞かれた時に、
仏教だの神道だのと自信と自覚を持っては言えないし、言ったことが無い。

そういう時に、自分は結局、無宗教なのだと思う。

宗教を持つ人たちを羨ましいと思うこともあるけれど、
既存の宗教に入りたいとは思わない。

私の友人たちの中には、熱心な仏教徒もいればクリスチャンもいる。
イスラム教やヒンズー教を信仰する人もいるし、
創価学会員もいればこの間は真如苑の信者と仲良くなった。

彼らの宗教観に関する話を聞くのはとても楽しい。
それぞれに信仰する、眼には見えない世界がある。
ある宗教には神様がいるし、ある宗教には神様がいない。
だけど、人間の力が及ばない、人間の力を超える世界を信仰しているという意味では、
どの宗教も共通しているように思う。
そういう意味でいえば、最近はもう珍しく無くなった精神世界やスピリチュアリズムも、
宗教と同じようなものかもしれない。

友人のひとりは、宗教を河のようなものだと言った。

「例えばさ、利根川とか荒川とかガンジス川とかミシシッピ川とか、宗教っていうのはそういう河みたいなもんだと思うんだよね。数ある河の中の、どの河を追っかけて行ったっていいんだ。どの河もみんな、海に繋がっているんだから。」



スピリチュアルな友人はこう言う。

「自分の中に神性を感じたことがある人は、自分以上に何かを信じるって、
なんか気持ち悪いんだと思います。」


クリスチャンの友人は、聖書を熱心にわかりやすく説明しながらこう言った。

「聖書に書いてあることは、全部本当にあったことなんだよ。」



トルコ人に信仰を問われた日本人の友人はこう答えていた。

「僕は神は信じていない。自分自身を、信じている。」


どれが正しいのか間違っているのか、私にはわからない。



だけど、
神様であれ自分であれ
自分を超える、自分を支配する
そんな眼には見えない大きな力を

きっとひとは憧れたり畏れたり

時に切実に求めたりするのかもしれないね。

私はきっとこれからもずっと無宗教なくせに
きっとこれからもたびたび宗教というものに惹かれていくような感じがする。

それはきっと、私がSMに興味を持った理由と大体同じ理由なんだろうな。笑


たとえば水の中で感じる、
心地のよい委ねの感覚みたいに

私は時々、
なにかがとても恋しくなるのかもしれないね。




2013/08/28

こんなことやってます


最近、こんなことやってま〜す。

皮革を染めて財布づくり!



手始めにシンプルな札入れを作りました。
既成の型紙は使いたく無かったので
(だってつまんないし)
とにかく試しに用途別に色々作ってみることにしました。


次は同じ形でカード入れ付き札入れ。
カードが5枚はいります☟




もちろん小銭入れも。


小銭入れはシッポ付きです。


まるっこい外見なので
なんだかコブタちゃんのようです。


こんな風に開きます。


掌サイズ。

おまけにカード入れ。
名刺も入るサイズで超シンプル構造!
フタ無し。でも中身落ちないよ。



とにかく既成の型紙を使わず全てゼロから作りたかったので
札入れ、小銭入れ、カード入れ、と今回は全てミニマムの単位から一度
作ってみました。

作ってみたら、なぜ、今の財布がこういう構造でつくられているのか、
すごくよくわかった気がしました。

今のスタンダードなお財布たちの構造は、先人たちの知恵が詰まってる!

だけど、先人たちがやってきたことをやってもつまんないしねえ。

やっぱり、なんでも習うより先にまずは自分でやってみるとおもしろい。

まだまだ課題だらけなんで、しばらくは楽しめそうです。






2013/08/17

時間


人の話を聞くのは楽しい。

とてもたのしい。

今まで自分が漠然と信じていたことが
ある友人の一言でいきなりくつがえされたり

自分が眼にも留めてなかったことのおもしろさに
不意に気付くきっかけになったり

逆に自分が命をかけて大事にしていることを
親しい人に冷たく「くだらないね」とぶった切られる驚きも、
自分ひとりの世界に閉じこもっていたら決して味わうことはできない。

価値観がひっくりかえされたり広がったりするたびに、
自分という域を少しずつ、超えて行ける気がする。

自由になれる、そんな気がする。


「僕はさ、過去っていうものをすごく大事にする人間だから、
例えばその過去を否定しなければならないような価値観の転換とかには少し躊躇することもあるんだよね。
基本的には、あまり固定観念とかで自分を縛るタイプの人間ではないんだけども。」


下北沢のカフェで、
最近仲良くなった祥くんはお茶を飲みながらそんなこと喋っていた。

祥くんは私と同い年の33歳。
6月の吉祥寺のグループ展にきてくれたのが初対面で、
なんとなく喋って仲良くなった。
「お茶でも飲みましょう」との彼の誘いに応じたのは、
芳名帳に書かれた彼の住所の部屋番号が私のと同じ「208」だったからである。

208は好きな数字なので、なんとなく親近感が湧いてしまった。

まあなんというか、人との出会いなんてのは得てしてそんなもんである。



「ちっちゃな過去の積み重ねでさ、今の自分という人間ができあがるわけでしょう。
 僕にとっては、それがとても大事なことなんだよね。
 たとえばさ、今日、僕がこのカフェに入ってお茶を飲んだとするでしょう。
 そしたら、今日、このカフェに来るために通らなければならなかった道を通って、
 このカフェに入らなければ見れなかったものを見て、
 今日このカフェに来なければ出会えなかった人に会ったりするわけなんだよね。
 そういうちっちゃななんてことない選択が、自分のこれからの時間を作っているんだと思うんだ。
 このカフェに入った時から、僕には今、このカフェに入らなかった人生、っていうのは存在しなくなるんだよね。」


そう言って、祥くんは眼の前に置かれた冷たい蓮茶を飲んだ。

店に入った時、彼はオレンジジュースが飲みたいなあと言っていたのだが、
私が蓮茶が美味しいから蓮茶にすると言ったら、
じゃあ僕も蓮茶にする、といって蓮茶を注文した。

「なんか、蓮茶が飲みたくなったから。」

どうやら彼は、そのとき蓮茶を飲む人生を選択したようである。
たとえそれが意識的でも、無意識であっても、それは彼の選択だ。

彼の時間は、彼が紡ぎ出していく。



「もし、今日、家を出る時に右足から出たとしたら、
 もう僕には、今日右足から出なかった人生は存在しないんだ。」


そうやって、彼の時間は積み重ねられる。

流れるのではなく、自分の手で、創られて築かれていく。

意識して自分で右足を踏み出せば、
それはその人にとっての世界の創造の一歩だろう。

だけど無意識に踏み出した右足も、確実にその人の道をつくる。
それはどちらも、他でもない自分の足跡だ。

そして踏み出した足跡の数は、その人の時間そのものになる。


「だからさ、たまに電車とかに乗ってて電車が大きく遅れたり止まったりすると、なんだかちょっと嬉しくなっちゃうの。周りの人たちはみんなイライラしたり怒ったりしてるけどさ、僕はなんかちょっとワクワクしちゃうんだよね。だって、これから、電車が止まったことでしか会えなかった人や、出会えなかった出来事に出会えるわけじゃない。」

そう言って祥くんは、
空になったグラスを持って笑った。

過去が大事だと話す祥くんは、
きっとそんな自分の足跡を、自分の手で重ねた時間を、
きっととても愛しているんだろう。

彼にはきっと、退屈な時間なんて、無いのかもしれないね。








2013/07/30

イイ味


友人のイラスト描き、峯くんに私の名刺を作ってもらいました。

「マッサージとかヘナ描きとか肩書きは別にいらないから!
これから先自分が何すんのかよくわかんないし。
連絡先だけいれて、峯くんのセンスで適当につくって!」

なんてとてもアバウトな感じで発注したのは
このイラスト描き峯くんのハイレベルなセンスを信頼してのことですよ。

先日、試作をいくつか持って来てくれました。


「なっちゃん、タイマッサージ師じゃん?
タイって言ったらやっぱり象かなーと思って。」


象!

てゆーか、これは象よりこのもじゃもじゃした木が気になるね・・。
手描きの文字がいい味出してる。
さすが


・・・てゆーか峯くん!
この猫カワイイ。

ああ〜〜。

この落書き感が峯くんのセンスなんだよね〜。
テキトーな感じ。
なのにテキトーに肩の力が抜けてるようでいて、
かっこよさや綺麗なものに対する揺るぎないこだわりのようなものが
彼の中には確固としてあるから、
それが不思議な緊張感として伝わってきて
見てて気持ちがいいのよね。

紙の白地までも不思議と綺麗に見えるし

象より私はこっちの方が



・・・・!!!



 ・・・なんだコレ!!

超ハイセンス!!

てゆーかナニこの美女!!


「イヤ、この絵さー、一年くらい前に描いたヤツなんだけど
あれ?なんかなっちゃんに似てるなーと思って。
いいや、コレで作っちゃえ!みたいな感じでつくっちゃった。ハハ!」


・・・そ、そうなの・・!?

なんか頭にカラスとかとまっちゃってますけど・・。

このシレっととぼけた感じの表情がなんか・・・


たまんないね。


「ハハ!そうそう!退屈そうな時のなっちゃんの顔。」


そ、そうなの・・・!?
まあいいけど・・・。


なんだか初めて見たのに、このコもう他人に思えない。


私の名刺、コレにする。

なんかわかんないけど
なんかもうコレしか無い気がする!

このなんかテキトーな頭の髪留めとかもカワイイし。

「あ〜、それ? 髪留めかあ〜。
オレ、ソレなんかカラスのフンっぽく見えちゃうかな〜と思って
ちょっとアレかなと思ってたんだけど。
はたまたコーヒーこぼしちゃったのかな?とかさ。
まあ、なんでもいいけどね〜〜。
それ、実は描いてる時インクこぼしちゃった跡だから!ハハ!」


そ、そうなんだ・・・。

まあ、別になんでも可愛いからいいけどさ・・・。



「あ、他にこんなのもあるけど。」



ああ、これはこれでまたオシャレだね・・。

てゆーか



これはどうなの・・?

手描きの文字がいい味出してるようでいて、
いい味出しすぎちゃってなんかもうちゃんと読めないんですけど。



「ハハ!だよね〜〜!たしかにコレは完全におもしろがって遊んでたね!
コレは無しだね!」


イヤ、実はちょっとこれも気に入ってるんだけどね。

自分を知っている友人に名刺を作ってもらうというのは
なんだか新鮮な体験でしたねえ。

峯くん、ありがとうね。








峯岸圭**作品集**