2018/07/03

切る


お客さんで、リストカットの痕がある人が結構多い。
薄ーく小さいのから、広範囲にザクザクの方まで、まあまあに多様である。
私自身は未経験のリスカであるが、行為としての興味はあった。

「リスカする人の、気持ちってどんなんかと思って。 貴理ちゃんはリスカってしたことある?」

「うん、あるよ~。血ダラダラみたいなエグイやつはないけどねえ。カッターでかすって血が滲むくらいのやつなら、あるよ。」

「あ!そうなんだ!あれってさ、なんで、切るの?絶対に死にたいわけじゃないよね?なんとなく、思春期の女子に多い気がするんだけど、それって関係あんのかね?」


死ぬなら他に確実な方法はいくらでもある。
リスカをする人には、リスカでしか味わえない気持ちというのがあるのではと思うのだが、実際どうなんだろうと、常々思っていた。


「うーん、私の場合は、二十歳くらいからはじめて、徐々に頻度が減っていって、20代後半くらいまではあったかな。」

「へえ。結構、大人になってもあるんだね」

「うん、切る時って、心がすんごい傷ついてる時が多いんだけど、そういう時、発狂しそうになるのを鎮めるために切ってた、って感じかな。切った時の感覚って、まるで抗不安薬を頓服で飲んだような・・・不安が消えてフワっと心地いい感覚になるんだよね。まあ、軽いドラックだよね。」

「なにそれ。おもしろい。・・・血抜き?瀉血??なんか、そんな昔の治療法とかなかったっけか?血抜くから血圧下がるんじゃないの?」

「え、そうなの?知らんけど」

「あ、いや私もよく知らんけど、テキトーなこと言った。てかさ、貴理ちゃんは結構大人になってからもやってたわけだけど、なんとなく、「昔やってた」的な人が多い感じがするんだよね。まあ、私のとこにくるお客さんに限った話だけど。だから、せいぜい十代の時にやってたのかな?って思うと、時期的には思春期?って思うんだけど。思春期って、性欲が芽生えることで今までの自我が一度壊されて、新しい自我が構築される時期じゃん?そんな自分の中での大工事があるわけだから、当たり前に情緒不安定にもなるし、リスカのきっかけができるってのはあるのかな、と思うんだけど。」

「うーん、私の場合は、思春期は情緒不安定にはなっていたが、摂食障害とか鬱とかになってたな。」

「へえ。私は、思春期はかなり気があらぶっていて、まあ、情緒不安定が攻撃的な方にでていたというか。リスカには興味なかったけど、タトゥーに関心持ちだしたりとか、ピアスとかボコボコにあけて、ほら、ボディーピアスとかも流行ってた時期だったからね、とんがったニードルでグリグリして、なぜかわざと痛くしながらピアスあけてたよ。笑 痛みっていうか、刺激なのかな、当時の私にとっては。でさ、その時の痛みの快感?みたいなものが、微妙に、性欲の快感と被るんだよね。」

「へえ?」

「ちょっと話が突拍子なく感じるかもしれないんだけど、思春期の頃ってさ、グロテスクなものに惹かれたりするじゃん?エロとグロッって微妙に被るから。ベクトルは違うけど、エロもグロもどちらも肉体の、命のことだからね、私は、当時は女のヌードをナマっぽくしたグロい変な絵ばっかり描いてたんだけど、その時の気持ちっていうか、体感的には、ピアスをわざと痛くしてグリグリ開けるときの感覚と、求めてるものが微妙に近い気がするんだよね。前にさ、「セックスとかオナニーを精神的に拒否し続けてきた少年が、代替行為として自傷するようになる」ってストーリーの小説を読んだときに、なんか、すんごい腑に落ちて、わかるわ~~!って。笑」

「なにそれ。笑 ちょっとおもしろいかも。リスカはオナニーみたいなものってことだよね?」

「うん。私は、そうかな・・?って思ってるんだけど。まあ、リスカはやったことないからな、想像しかできないんだけどさ。」

「まあ、要は、気持ちいいんだよな・・・。確かに。心の痛みに対しての対処法が、抗不安薬だったり、ドラックや酒だったり、セックスやオナニーだったり、人によって依存するものは違うけれど、やっぱなんか気持ちいいから依存するんだろうね。ただ、酒とかドラックとかセックスと違うのは、リスカは身体的には痛いのに、なぜか心は気持ちよく鎮まるってのが、どうしてかよくわからんけど・・・」

いや、まあ、セックス中に鞭で打たれて安らかな気持ちになる人もいるからな。
いろいろさね。

「そういえば、ハナシついでに聞くけど」

「うん」

「今度、初めてタトゥー入れたいと思ってるんだけど、彫り師さんて何を基準に選べばいいんかね?」

「ネットで色んな人の作品みて、作風が一番好きな人にすればいいんじゃない?当たり前だけど、その方がフィーリングも合うだろうし、デザイン練るときもやりやすいと思うよ。」

「そっか!わかった、色々みてみるわ。」

「てゆーかさ、タトゥーもオナニーに近いと思うんだよね、私的には。」

「ハハ!」

「極論だけどさ、タトゥーとSMと、もしかしたらリストカットも、より原始的な生命力としての性欲の確認と、自己確認欲求の発露の一例としては、同じようなもんなのかもな、なんて思ってるよ。」

より前向きな言い方をすれば、「生命エネルギーの発露」。

たとえ自傷であれ、通常人間は、自分が生き抜くためのことしかやらない。

まあ、わかんないけどね。











2018/06/24

用心



「インドで、タクシー運転手に日本人の女の子が性的暴行うけたってニュースがあったじゃん?」

友人のけーこさんはパキスタン人の旦那さんをもつ30代の女性である。

「インドやパキスタンで車に乗る時は、まあこの二国に限らずだけど、車のナンバーを、可能ならドライバーの顔も、携帯電話で写真に撮って友人などに送っておくのをオススメする。女も男もね。できれば隠れてではなく、ドライバーの前でドライバーに一言断ってから撮影をするとよい。そうやってこちらが用心しておくことでドライバーへの牽制にもなるから。」


「...なるほど。」

私があの手のニュースをきいていつも一番先に思うのは、被害に遭った女の子が、どれだけ気をつけてたのかな、ってことである。もちろん気を付けてようが気をつけてなかろうが、加害者が悪いのは決まってる。ただ、被害者がどれだけ危険を認識していたのかを推測することで、問題に対する認識も変わる。


「フンザ(パキスタンの観光地)だと声かけてきた人のバイクに2ケツしたり車に乗ったりして送ってもらう人多いけど、フンザは特別な場所ではないよ。私の知ってる人が被害にあったこともあり、だいぶ前にそうやって車に乗せてもらった日本人の女の子が襲われかけて震えて帰って来たし、一昨年は欧米人の女が襲われ未遂で、警察沙汰になってた。泊まってる部屋に、夜にしつこくやってくる男もいるよ。
フンザは安全って思い込んで、荷物を出しっぱなしにしたり鍵をかけずにシャワーしたりする旅行者も多いけど、フンザは特別な場所ではないよ、絶対に特別な安全な場所なんてこの世にはないよ。レイプされても、殺されても仕方ないって本気で思えないならどんな場所でも、知らない人のバイクや車に乗るべきではないよ。」


「うん、私もそう思う。海外ではもちろんだけどさ、日本で、日本人の女の子に対しても、私たまに同じようなこと思うんだよね。幸いにも私の周りにはレイプされたり殺されたりしたコは居ないけど、ストーカーとかレイプ未遂とか盗撮とかはあってさ、そのこたちは皆一様に「そんなつもりじゃなかった(そんなことされるとは思わなかった)」っていうんだよね。勿論、悪いのは加害者だよ。だけど、私は「そんなことされるとは思わなかった」って、女の方のも、言っちゃいけないと思うんだ。だって、男は、絶対に本質的にレイプとか盗撮とかする生き物だから。極論だけど、私はそう思ってるよ。勿論、一生誰もレイプしない理性が道徳的に働く男もいるけど、それは偶然、魔が差さなかっただけであって、本質的には、レイプしない男もレイプする男も同じだと思ってる。そう思って気をつけてるくらいが、ちょうどいいと思うよ。タクシーナンバーを撮影するような牽制、とはちょっと違うかもしれないけど、こちらが気をつけてれば、男が魔が差すことを抑制できるかもしれないわけだし。」


仲のよい男友達の留守の部屋を借りて、ひとりで一晩すごしたら盗撮されてたとか(ありがち)

とても感じの良い優しい男の子と知り合い、そんなつもりなく遊びに行ったらヤられそうになったとか(これ当然じゃないの?)

お酒奢ってもらったら睡眠薬もられたとか(これは最悪)

あとレアなとこだと、女の子にプレゼントするお菓子に自分の精液混ぜて渡す男とかもいるよ。ホテルのシャンプーに精液まぜたりする男もいる。(私にはこれが男の本質のように感じて、若干微笑ましい気持ちになるけど。)


まあ、勿論すべての男がそうじゃないという意見もあるだろうけど、私の周りで被害に合ってる女性は皆「そうじゃない」といいながら被害に合っている。

だから、そういう想定くらいは、日本在住の女性もしていてもよいのではないかと。

けっして、男が加害者になるのをしかたがない、ヤられたのは女も悪い、と言いたいわけではない。

どちらが悪いとかいってても問題解決にならないことって結構あるでしょ。最近のセクハラ問題とかさ。まあ、それはそれですが。

女性が気をつけることが、男の理性を働かせ、魔が差すことの抑止力に繋がるだろうと言いたいのです。
「そんなことされるとおもわなかった」とか、女もいつまで言ってんだ、と私は思う。

勿論、女性が気をつけててもなお加害してくる男もいるだろうが、それはまた別の話。
そんな男は社会や人類に無用なので即刻射殺してほしい。
 

「今回のニュースの件はタクシーなので別だけど、日本にいる時はさ「知らない人に声をかけられて車・バイクに乗り込む」って、普通まずしないじゃん?でも、海外だと「出会って数分の人の車・バイクに乗り込む」をする人、結構見るのだよね。特にフンザは移動手段が少ないことや、なぜか「安全」という思い込みが一人歩きしていることもあって、すごく多い。日本で危ないと思ってしないことを、なんで海外でするの?と思う。
旅行中は非日常だから旅行ハイになって何も考えてないんだろうけど。旅行マジックとでも言うか…
なので、ハイになってる海外旅行中こそ自分それ日本で同じ事する?って言うのをちゃんと考えて行動すべきって思ってる。」


「うん」


「知らない人についてく以外でみなさんうっかりやりがちなのが「何の用心もせず部屋のドアを開ける」なので、これ、一番気をつけるべき。部屋の鍵開けた瞬間押し入られたりすることもある。あと、例え知ってる相手でも本当に信用できる相手以外は密室で二人きりにならない。
インド・パキスタンのジェントルマンはやむを得ず部屋に男女二人きりになる場合、ちゃんとドアを開けておいてくれます。そして自分は必ずドア側に座ること。」


...あ、私、


それ考えたことなかった。

部屋に男の人が入った後は、カメラとか盗聴器とか仕掛けられてないか、チェックしたりはするんだけどね。
まあ、それは日本でのことだけど。

カメラ&盗聴器チェックは、結構部屋の隅々までやらなきゃいけない上にモノが多いと見つけにくいので(見つけるというよりかは普段部屋にあるものをすべて把握しておき、普段無いものを見つけやすくする感じです)、結果的に部屋の掃除&断捨離を常にやってる状態になりますので、おススメです。







2018/06/14

後悔


「タトゥーをずっと入れたかったんですけど、この間、勢いでいれちゃいました」

と、お客様からのご報告。

ボディアートという仕事柄、お客様とは時折そんな話をします。

まあ、大体は、「タトゥーをいれようかどうか迷っている」話なんですけどね。

「よかったじゃないですか!前から入れたいって言ってましたもんね、おめでとうございます!」

私も、相手が例えばハタチそこそこの若者だったら「いれちゃえよ!」とは言いませんけどね。
相手がどのくらい切羽詰まってるかにもよりますけど(タトゥーに対する欲求は人によっては唐突で緊急なこともある。)まあ、ハタチくらいの若いコで「ずっとなんとなく入れたくて...」みたいなコには「30才になっても入れたかったら入れたらよいと思いますよ、大体30歳になれば自分がどんな仕事につくのかとか、どういう社会的なグループの中で生きていくのかもわかりますから。」って提案します。

「悩んでるが勢いでいれてしまいそう」な人に対しては、「まずは下着で隠れる部分に小さいのいれると可愛いし便利ですよ。水着でも隠せるし。胸とか腰骨のあたりとか。」と言ってみます。

タトゥーに対する欲求って、心理的というよりかは肉体的欲求に近い感じが個人的にはするので、「やっちゃダメ」とか言われても無理な気がするんですよね。お腹すいてるときに「食べちゃだめ」って言われてもお腹はすいたままでしょ。あれと同じです。我慢したところで飢餓感が増すだけ。

まあ、どちらにしても私にとっては他人事ですから、「やめなよ、後悔するよ!」と言う人と同じく、無責任な親切心からの発言ではありますが。

まあ、当たり前ですけど決めるのは自分ですからね。

「娘がスミをいれた!って知ったら、多分母は卒倒すると思うんですけどね。私的には今のところ入れたことで良いことしかなかったので、よかったと思ってます。」

タトゥーいれたなんて超楽しいことなはずなのに、なぜもっと手放しで喜べないのかっつーね... そこらへんが、ちょっと残念ではあるけどね。

「絶対後悔するよ!って言われちゃったんですけどね。友達には。」

「ああ、そういうこと言う人、いますよね。」

「あれって、心配してる風の無責任な正義感ですよね。後悔するかなんて、ホントのこと言えば自分のことだってどうなるかわからないのに、他人が後悔するかなんてわかるはずがないw」

「はは!そうですね。まあ、後悔しても大丈夫ですよ、タトゥーだって身体が死ねば無くなりますから。一生って、永遠じゃないし、後悔できるほど多分、人生って長くない。私は、タトゥー入れたときそう思いましたけどね。「一生残るんだよ?後悔するよ!」とか言われても、「貴方の一生って、どんだけ長いの?」って思いますよ。後悔してるほど人生って長くないし、タトゥーいれて後悔する人は多分タトゥーいれなくても後悔するし、むしろ入れて後悔してる人は、タトゥーをいれたことより自分の「もし○○してなかったらもっと今頃は...」っていう無駄な思考癖に悩んだ方がいいと思うんですよね。まあ、後悔にも色んな種類があるから、これはこの話においての極論かもしれないですけど。


いやべつに、入れればよい!って話ではなくてね。

ホントにいれたい人は悩む暇もなく入れちゃいますから、悩んでる人はまあとりあえずウチでジャグアタトゥーでもどうですか、って話です。


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