2014/03/05

奉仕



「なんか悩み事とかある?」


手相鑑定士の藍さんに聞かれました。
手相鑑定士っていうか、この人他にも数秘鑑定とか除霊とか
スプーン曲げならぬ歯ブラシ曲げまでやっちゃうスゴい人なんですけど。

先日、私のタイマッサージと引き換えに鑑定してもらったんです。
手相と数秘は以前見てもらったことがあるので、
今回は藍さんが新しく新メニュー検討中のおもしろそうなやつをね。


「過去世からの思い癖を抜くんだよ。今世にはもう必要ないヤツをね。」


藍さんいわく、人は何度も生まれ変わりを繰り返して行くわけだけど、
その間に繰り返し魂に刻まれていくその人特有の思い込み、というか思い癖というのがあるらしい。
それはその魂が経て来た人生によって形成されてきた思い込みであるわけだから、
間違いなくそれはその人自身でもあるわけだけど、
その思い込みが今世を生きるのにすでに必要のない場合は、それを除去することもできるらしい。
思い込みはその人を不自由にすることがある。
それ自体が、自分自身が作り出したものでありながら。


「悩みっていうほどのものでもないんですけど」

「うん」

「私、物欲が無いんですよね。」


ホントに悩みってほどのものでもないんだけども、
何となくこんな話が私の口から出て来た。

「私、いつもすごく『仕事がしたい!!』って思ってるんですけど、
 実は仕事のモチベーションになるものが無いんです。
 生活の為に働くってほど生活には困ってないし、
 だけどもっとアレが欲しいコレが欲しい、だから働く!っていうほど
 何かが欲しいわけでもないし。」

っていうか必要最低限以外のものはいらないっていつも思ってるんですよね。
変なとこでストイックで、
そのストイックさは私の美意識の一端でもあるから大事には思ってるんですけど、
たまに、ただアレが欲しい、コレが欲しい、お金を稼ぐのがただ楽しい、
って言う人に会うとなんでかすごく羨ましくなったりするんです。
そういう人は、仕事をするのも楽しいだろうなあ、って、そんな風に思ったりして。


「ふうーん・・・」


藍さんが私に両手をテーブルの上に置くようにうながして来たのでその通りにした。
っていうか、そのとき国分寺の駅近くのカフェにいたんだけど、
カフェとかでこういうことやるのって、ちょっと恥ずかしいよね・・・。
占いの時とかも思うんだけど。
まあ いいんだけど。


「・・・え!なに、マエダさんってそっち系・・」


え、なに。


「・・・尼さん」


尼さん? なに 私の過去世の話?


「あ、違った。尼さんまではいかないんだ。
 尼さんじゃないんだけど、なんか、奉仕活動みたいなのをしてるひと。」


あ、私の過去世の話ですね。
見えたんですね。
いつも思うことなんですけど、こういう普通の人には見えないものを見る人たちって、
どういうふうに世界が見えてるんでしょうね。
ある人は「脳内スクリーンに映る」と言っていましたが、肉眼で見える人もいるようです。
あと、映像は無しで声だけとか思考だけを感知する人もいるんだよね。
藍さんはどっちなのかしら。
聞き忘れてしまいましたが。

過去世といえば以前、私は別の人には「金嫌いの花魁」と言われたこともありました。
「赤ん坊を抱えて火の手から逃げる若い母親」が見えると言われたこともあり
なんだか私の魂は随分エキセントリックな人生を歩んでいるものだと思ったものでしたが、
一転、尼さんばりの奉仕活動ですか。


「なんかね、すごくストイックな人だったみたい。
 自分は必要最低限のものだけあればいいって。
 それ以外のお金や物は、自分以外のところで回ればいいって、
 そういう風に思ってる人。」


はあーーーん・・・
な、なんかわかるようなわからないような。
っていうか、お金も物も、自分以外のところで回すよりも、
自分がその循環に入って輪を大きくした方がもっとうまくまわるような気がするんですが・・
自然の摂理として。

過去世の私はそんなふうには考えられなくて、 自己犠牲を奉仕と思っている人だったんかな。

自分を削った分だけ、人が幸せになれると思っている人。

・・・なんつーか・・・

ある意味、かわいそうなひとだったのかもね。



「なんかね、今世のマエダさんにも、その奉仕の精神を受け継いで欲しいんだって。」


・・・え!!


なに勝手にそこ、ふたりで喋ってんのよ・・・!!


今世の私を差し置いて、過去世の私は藍さんとお喋り中らしい。
もちろん、私には何も見えないし聞こえないのですが。
藍さんによるとその奉仕活動好きの過去世の私は、
シュっとした一重瞼のさっぱりした顔をした女性らしい。


「仕事を奉仕だと思えば、仕事だってできるでしょ?・・って言ってるけど。」



いやいやいやいやいや



「ムリだから!」

「うん、それダメだから。」



そんな意味のわからないことを今世の私に託さないでくれ!

つーか、すでに託されてるわけだけど!

だからこそ今の私がいるわけだけど。

正直、藍さんに見てもらうまでは、
私にはそんな変な過去世からの思い癖なんてないと思っていた。

だけど、やっぱりあるもんなんだね。
だって、「奉仕」って聞いた途端ピンときたもん。

昔から自分の中にある、
「仕事大好き」なのに「金稼ぐの嫌い」っていう強烈なジレンマとか
「必要最小限」にこだわる不必要なストイックさとか
「自己犠牲的奉仕」に対する嫌悪感とか。

私、昔から「金を稼ぐ」ことが大ッ嫌いで、
「お金」のことを考えると一気にヤル気がなくなっちゃうような人間なんだけど、
「金稼ぐのが嫌い」って、この世に生きててホントーに困るんだよ!
てゆーか、私の場合は「稼ぐ」を通り越して「お金」自体に昔からすごく嫌悪感あるしね・・・
この嫌悪感がなくなったらどれだけこの世で生きていくのが楽かっつー話で。
「自己犠牲的奉仕」についてはとりあえずSMでM女の真似事をやったおかげで
自分なりに「コレちがうだろ。愛じゃないだろ。」って結論が出たわけなんでもうOKなんですが、
まあ、この一連の自分の性根がもしその過去世からの「奉仕精神」の産物であるとするならば、
とりあえずはまとめて抜いてもらえるのにこしたことないです。
つーか、是非 抜いて頂きたい。

大体さ、奉仕をよく「無私の労働」なんていうけどさ、
「私」がなかったら生まれてきた意味なんか、ないじゃんね・・・。


「うん、じゃあ、この過去世からの「奉仕」の思い癖を、抜こうか。」




ハイ、おねがいします・・・




というわけで抜いて頂きました。


具体的にどうやって抜いてもらったのか、
具体的に描写してもいいんだけど・・・

多分、書いたところで読む方は別におもしろくないと思うんだよね・・

意外と地味な作業だったからねえ。

ちなみにこの「思い込みを抜く」という行為を藍さんは
「過去世からの契約を解除する」とも言いましたが、

私が実際に抜いてもらった感じからすると
本当に「抜く」という言葉がぴったり、というか・・・


ずるり


と抜かれていきました。
私の過去世からの「奉仕精神」。
なんか鰻とかナマズみたいなものが、
ぬるりと身体から抜けて行ったような感じだったよ・・


「なんか『河童がシリコダマを抜かれる』とかいう言葉あるじゃん?
 ・・・まさにあんな感じっていうか・・・シリコダマ抜かれた気分。」


「いや、シリコダマ抜かれるのは河童じゃなくて、
 河童が人間のシリコダマを抜くんだけどね・・・。」


あ、そうか。
まあどちらにしてもぬるりと抜かれていきましたよ・・・

ああ、それにしてもスッキリです。

私今年で34歳になりますが、
34年ぶりのスッキリ感です。

「今まであったものが抜けたわけだから、その空洞が埋まるまではなんかまだグラグラしたり、また以前の自分に戻っちゃうような感覚になるかもしれないけど、それは大丈夫だからね。もう思い癖はキッチリ抜いて上の方に返しちゃったから、戻ってくることはないから、もしなにか不安に思っても、それはすぐ消えるから、大丈夫だからね。」

ええ、もうなんてゆーか、
不安定感なんて微塵もないです。
ただただ憑き物が落ちたようなスッキリ感しかないですよ。

身体が軽くなりすぎて、
翌日、仕事に向かう電車の中で窓の外を眺めてたら
思わず涙が出そうになりました。
恥ずかしい話ですが。


「なんかね〜、このマエダさんの過去世の人はさ、奉仕活動とかに励みつつも、
自分のことでもっと色々やりたかったこともあったみたい。心残りも、あるのかもね。」


・・・そりゃそうでしょうよ。

その他人への奉仕が、
本当に自分のためになっていたのなら特に心残りはないでしょうけど
きっと過去世の私はそこまで達観できていたわけじゃ無いと思いますよ。

ああ、あれもしたい、これもしたい、けど、今は人のために奉仕活動をせねば・・
って感じで、禁欲的に真面目にやっていたと思うんです。
だとしたら自分では納得しつつも、心残りはありますよね。



だけどまあ、それはそれでいいんですよね。

だからこそ、今の私があるわけですから。