2013/03/16

いってきます


今日から十日間、カナダに旅行に行ってきます。

初めは「アザラシの肝臓が食べたい!」というところからスタートしたカナダ旅行計画ですが

・・・なぜか途中から全く計画をたてる意欲が湧かず。
まあ、もともと、計画とかたてるのは苦手だからね〜。
計画なんかたてなくても、行くべきところに行け、会うべき人に会えるのが
私の旅というものと、ここ数年の実感として思うようになりました。

最初の5日はバンクーバー。
残りはカナディアンロッキーに行く予定。
一応、それくらいは決めておいたけど。

今回の荷物は肩にかけられる旅行用バッグひとつ。
重さは4kg。
コレぐらいの重さが私的には限度なんだよなあ。
機内に持ち込めて、片手で持てて、
不自由そうに歩かなくて済む荷物の重さってコレくらい。
それにしても今回は寒いところにいくので衣類がかさ張る。
なんかいつもよりバッグが膨らんでいる・・。

計画をたてる意欲は湧かないものの、
なぜか今回のカナダ旅行はなにかとても楽しいことが起こる予感。
なにかはわかんないけど、そこに絶対なにかが在る予感。

なにかはわからないけど、
そんな楽しいなにかを、私はただ受け取りに行けばいいんだと
そんな感じで行ってきます。





2013/03/09

黒ひげ


六本木のとあるバーで居合わせた男性客3人と、
バーのカウンターで「黒ひげ危機一発」をやるはめになった。

「黒ひげ危機一発」とは誰でも一度はやったことがあるであろう、
樽に剣を刺していき、海賊がびょーんと飛び出るあのゲームのことである。
びょーんと飛び出ることを当たりとするかハズレとするかは特に決まりがないらしく、
その都度、参加者が決めていいことになっている。

その日の「びょーん」は「ハズレ」であった。

なぜなら、樽からびょーんと海賊が飛び出す度に、
飛び出させた張本人は一枚ずつ、服を脱いでいかねばならないからである。

季節は夏、私は黒のキャミソールに黒い絞り柄のスカートをはいていた。
その下は黒ブラに黒パンツ。
一度でも負けたらアウトである。
私はそれほど人前で脱ぐことに抵抗が無い人間ではあるけれど、
その日飲み屋で知り合ったばかりの男にタダで身体を見せてやるのは
やはりプライドが許さないというか、なんというかもったいない感じがしたんだよな。
恥ずかしくはないが、ただもったいないからイヤなのである。

大体、男三人と女一人でこのゲームをやる意義なんて、ひとつしかない。
いや、わかっちゃーいるんだけど・・。
大の大人である男三人が一人の女を脱がそうと、
子供のように意気揚々と結託する様を見ていたらなんだか微笑ましくってさ。
こんなにみんなが楽しそうなのに、
私一人が「イヤ」とか言ってその場の空気を盛り下げるのもなんか申し訳ないっつーか・・・。

わたしはみんなの楽しい顔を見るのが好きなので、
なんというかそんな自分に対して変なプライドがうずき出し、
なにがなんでもこのゲームは受けてたたねばと強く思った。
そしてこの楽しい空気を壊さずに、男たちのテンションと結束感を保ちながら、
私が裸体を晒さずにすむ方法は言わずもがな、ひとつである。



私はこの時、どーしてもこのゲームに勝たねばならないと本気で思った。

この子供のようにはしゃぐおバカな男たちを楽しませてやりたいと心から思った。

だけど、もったいないから、裸にはなりたくない。

とりあえず、この男三人を丸裸にして、自分一人が着衣のまま勝ち残るしかない。

みんなでこの場を楽しむには、それしか方法は無いのである。

それなら、時間的にも最後の男一人が丸裸になるまで男たちは希望を持って楽しめ、
ゲームに参加しての堂々と勝ち残っての私の着衣なら、男たちも納得してくれるだろう。

しかし、勝つとは言ってもこのゲームは完全に「運」で勝敗が決まるゲームである。
穴24コのうちのどれかひとつがハズレであり、それを引いてはいけないという、
運以外のなにものも作用できない、まさに神頼みゲーム・・・。

一瞬、自分が負ける確率を計算しそうになった。
とはいっても、確率の計算なんて難しくてできないので、
ものすごく単純に考えて、ハズレを引く確率は誰でも等しく24分の一。
しかし、男3人の目的はひとつであり、
男3人が皆丸裸になるまではゲームを続けられるわけだから、
その3人がそれぞれ4枚ずつ服を着ているとして、脱げる服は男みんなで計12枚。
単純に考えても、私が完全着衣のまま勝ち残るためには、自分はノーミスで、
さらに12枚の男の服を脱がさなければならないのである。
男たちが12回ミスする間に、自分は一度もミスは許されないということだ。


・・・神頼みゲーム。


おまえら、みんな丸裸にしてやるからな・・・。

と、男たちに愛を込めて心の中で呟いた時、
自分の脳裏におもしろい映像が浮かんだ。

宇宙みたいな真っ黒な暗闇に、強く白い星みたいな光が見えた。
その瞬間、私にはそれが、神様だとわかった。


・・・いや


すみませんね。


かみさまとか変なこと言っちゃって・・・。


いや だけどさ、あれはたしかに神様みたいなもんだったんだよね。
人の形とかしてないけど。
いや 私、へんな宗教とかやってないですよ。
だけど、あれはなんて言っていいかわかんないけど、
まあ、神様だったんだよね・・・。
すみませんけど、そんな感じで納得してください。


たしかにこのゲームは神頼みゲームなので
本気で勝ちたいと思ったら神様にお出まし願うしかないといえばないのだが
まさかホントにいらして頂けるとは。
ありがたいかぎりです。

私は心の中で、その白い強い光に向かって
「黒ひげで勝ちたい」というお願い事を強くつよく、発信した。
あまりに強く発信したせいでお願い事は私の手元から勢いよく離れて、
すべて神様のもとに託すかのように飛んでいってしまった。
神様が受け取ってくれたかどうかはわからない。
だけど、自分の手を離れたお願い事にはもう固執すまいと思った。
全力でお願い事を申請したら、あとは自分ではなにもできない。
私にそれを実現する資格があるのなら、願い事は叶うだろう。
あとは結果がどうでるか、ただ待つばかりである。

そんな感じで、神頼みゲームが始まった。

私はただひたすら、一切なにも考えずに機械的に樽に剣を差し込んでいった。

ただ、なにも考えないということだけを自分自身に決めていた。


長々と状況描写するのは疲れるので先に結果だけ言うと、
結果は私の一人勝ちであった。

ひとり、ふたり、さんにんと、パンツまで脱がして丸裸にしてやった。
私は上下で黒いワンピース状態のままである。

実は一回だけ、私もびょーんと黒ひげを飛び出させてしまったので、
その時は勝ち残ることを前提に、キャミソールのまま下のブラだけを取った。
ノーブラの私の胸をキャミソールごしに見る男たちもなかなか楽しんでるふうだったので
これはこれで良しとした。
何度も言うが、皆が楽しければ、それはそれでなんでもいいのだ。

バーのカウンターで、男三人が全裸で座り、
脱いだ服で下半身を隠す様はなかなかしてやったりで気分がいい。

なんだかこの大人なんだか子供なんだかよくわからない黒ひげの顔も、
最初は気持ち悪かったがなんとなく可愛く見えてきてしまった。

神様の力は偉大である。

神様、ありがとう、と言いたいところだが、
この勝利は、全力で神様を呼び、
的確な願い事を申請した自分の力であったと感じている。

人生初の神様との対面がしかしこんな形であったことは意外であった。

感謝するべき相手はそんな機会を与えてくれた、この黒ひげなのかもしれない。

だから一応、お礼は言っておこう。

ありがとね、黒ひげ。