2013/02/21

渋谷にて


先週末、バイブレーターにまつわる女性限定のトークイベントに参加した。

この場合のバイブレーターはいわゆる「大人のおもちゃ」のソレである。

女性が選び女性が売る、女性による女性のためのアダルトグッズの
輸入販売を手がける会社の社長が企画した、
参加者20人ほどのアットホームなイベントだった。

渋谷の道玄坂を登りきったあたりに位置する、
こじんまりとした女性限定のバーで行われたそのイベントは、
数々のお洒落な高性能バイブを囲みながらの女性だらけの座談会といった感じ。

当然のことながら、話題はセックスやオナニーの話に終始した。
本当はこれだけではなく、
ジェンダーや女性論の話が一貫してこのイベントの基盤になってはいるのだが、
基本的にエロの話は小難しく考えなくて済む事ならば考えない方がいいとも思うので、
あえてここには書かない事にする。
バイブレーターはお洒落で気持ち良くよく働き、
壊れにくければもうそれだけで充分なのだ。

このイベントで、主催者の女性が何気なく口にした話が大変おもしろかった。

「高校生の時にさ、女友達とふたりで中央線に乗ってたんだよね。
 ふたりで電車のつり革につかまっててさ、フツーにおしゃべりとかしてたんだけど、
 不意になんの前触れもなく、友達が言ったんだよね。
 『あんたはさ、どうやってオナニーしてんの?』って。」


・・・


「フツーにさ、車内に乗客とかいるんだよ。
 びっくりして一瞬、どうしようか迷ったんだけど、なんかフツーに堂々と答えたくてさ、
 フツーに答えたんだよね。
 『え? シャワー。』って。」


・・・


「国分寺から電車に乗ってたんだけど、そのあと友達はひとりで三鷹でおりやがってさ、
 私は新宿まで乗らなきゃいけなかったから、さすがに人の視線が痛くて車両は変えたけどね〜。あはは!」


あはは! と いうか、
私はこの話を聞いてあることを思い出してしまった。

以前、ちょっと仲良くなった顔見知り程度の男に、こんなことを聞かれたことがあった。

「ねえ、ナツコちゃんってさ、オナニーとかするの?」

私は相手が男でも女でもエロの話はいつでも歓迎するが、
大して好きでもない男にあからさまにエロ話を持ちかけられるのは、
実はあまり好きではない。
この日も目の前の男と楽しいエロ話を掛け合う気はさらさら無く、
冷たくぶった切ってやることにした。

「はい、毎日、朝晩しますけど? 日課みたいなもんですから。」

だからなに?みたいな感じで無表情で返してやったら、
男は、へえ〜そうなんだ、すごいね・・・みたいな感じで
それ以上は私に話を振る気を無くしたみたいで、急に無口になった。

実は当時、私はそこまで精力的にオナニーをしていたわけでは無かったのだが、
そんなことを馬鹿正直に目の前の男に申告したところで、その私の申告を肴に、
男は勝手に頭の中で自分もオナニーを始めるだけなのである。

何故、大して好きでもない男にオナニーの餌を提供してやらなきゃならんのだ。

きっと、「ねえ、なつこちゃんってさ、オナニーとかするの?」
と聞いて来た男が欲しがっていた餌というのは、多分、
女の恥じらいのようなものなんだろう。

男は、女が自分の欲求に恥らって、それを隠そうとするところをみたいのである。
弱みのように恥を隠した女の、隠されたそれを暴きたいという欲求が、
きっと男にはあるんだろう。

なので過少申告どころか過大申告してきた私に対して男がその後興味を失うのも、
当然といえば当然である。
望んだ餌を与えてくれないと解れば、誰だってその人間には興味を失うのだ。

しかしそれを解っていながらも、そして解っているからこそ、
私はそういう男の欲求を露呈されると大変しらけて、
つい、冷たい態度をとりたくなってしまう。


「・・・え!・・・オナニーですか? 
 え、そんな・・・。しませんよ、そんなこと・・。」

なんて感じで、ちょっと恥ずかしそうに、
されど普段はそんな恥ずかしい事はしないけど、
たまに我慢できなくてちょっとしちゃう時があるんです、
みたいな雰囲気を漂わせて話を繋げれば
きっとその男は喜んで私のオナニー話を自分のオナニーの餌にしてくれたことであろう。
だけど、私は別に好きでもない男にそんな恥という最高級の餌を蒔いてやるような、
そんなやさしい女じゃないんだ。ごめんな。

てゆーかその前に、本来、男女間のエロ話というのは余程お互い気を許せているか、
興味を持っている間柄でないと難しいと思うんだよ。
ちゃんとした男はそこらへんの加減がよくわかってるから、
時期的に女がそういう話を楽しんで受け入れるようにならない限り、
そういう不躾な話は振ってきたりはしないんだ。

そういう不躾さに、なんかその時はきっと、負けたく無かったんだよな。

バイブレーターのイベントで、
主催者の女性が披露した「シャワー」の話は、
この私の話とは大分違うものではあるのだけれどなんだか妙に心に残る話だった。

店内で紹介され賞賛を浴びる数々のカラフルな高機能バイブレーターはすべて、
女が、女の欲望のために作り上げた世界のように見えた。
それを男のためと妄想するのは、浅はかな男たちの驕りだろう。

女の恥も欲望も、
それはすべて女が自分たちのために求め消費するためのもの。

女が持っているものはすべて、
死ぬまで女のものなんだ。