2012/04/20


最近、SM愛好者たちのサロンに遊びに行かせて頂くようになりました。
都内某所、高層マンションの一室で毎週ひっそり開かれるSMサロン。

もともとSでもMでもない私ですが、
興味は昔からあったので意外とこれがまた楽しいんですよ。

最初はあまり興味がなかった縄での縛りも、最近はなんかおもしろいんです。

サロンで使われるのは、緊縛用の赤いロープ。

意外と拘束されるのって楽というか、安らかな気分になるもんなんですよ。
まあ、あくまで私の場合はですけどね。
拘束されてる間は、もう自分で何もしようとしなくていいじゃないですか。
だってなにもできないし。
相手に全て委ねるしかないわけですよね。
それって、意外と気持ちが穏やかでいいもんだなあ、と
十年前に初めて手錠で拘束された時に思ったんですよ。


「Sさんて、すごくサクッと簡潔に女の人を縛るよね。
 逆にすごくねちねちとしつこく縄を絡めて縛る人もいるじゃないですか。
 ホントに人によって縛り方も違うんもんなんですねえ。」


そのSMサロンの主催者の加賀さんは元SM雑誌の編集者の63歳。
その加賀さんとお客さんたちが帰ったあと、こんな話をしました。

この加賀さんの縛り方って、拘束されてるのにおかしな話なんですけど全然苦しくないんですよ。
拘束感はあるんですけどね、過度な負担がかからないというか、
きっちり拘束されてるわりには身体は痛くならないんです。
縛るのにも必要以上に余分な時間はかけず、そして縄を解くのもサクッと解く。
縄を解くのって、意外と時間がかかるものなんですよ。
だけど、加賀さんの場合はここさえ解けば残りも解ける、
という一カ所を起点にして縛っているらしく、縄を解くのもさらりと楽なもんです。

「俺の場合はな、縛りそのものがどうっていうのもあるけど、
 縛ったあとに女をどう責めようか、どう遊ぼうか、そっちの方を目的に考えてるから、
 縛り自体はああいう形になるんだよ。」

既に吸い殻でいっぱいの灰皿に更に煙草を押し潰して、加賀さんが言いました。

ああ〜。そうか。

縄で縛るってことが最終的な目的じゃないってことかな。
縄は目的に至るひとつの手段だから、それによって余計な不都合が生じないように
ああいう拘束感が有りつつも簡潔な縛り方を追求してきたってことなんですかね。

「逆に、今日、お前、トモに縛られたろ。
 あいつは縄フェチだからな、俺とはまた違うんだよ。」

「ああ、私、今日すごくそれがよくわかったんですよ。
 トモさんって、縛り方がすごくネチネチしてるよね。
 トモさん自身が縄と戯れてるような感じっていうか、妙な感じでしたよ。」

トモさんはそのサロンに関わっているおそらく50歳前後の長身のいかにも男前な男性ですが、

まあ それはもうねちねちと縄と戯れる方なんですよ。

女の身体に縄を沿わせることがとにかく楽しいんでしょうね。
執拗な縛り方をするんです。
加賀さんのようにあらかじめ自ら設定した完成形に向かってサクッと縛り上げる形というよりも、
その縛る過程を味わっているというか、
味わっているゆえにか、
手の沿わせ方とか立ち位置とかそういうのもなんか独特のイヤラシさがあるんです。
同じような縛られフェチの女の子だったら堪んないでしょうね。

「トモさんって、たまに喋りながら自分の手とか何重にも縛ったりしてるしね。
 ホントに縄フェチって感じがする・・。」

「・・あいつはな〜。なんか最近、首に絡ませて縛るのに凝ってるだろ。
 あれを端で見てると、ヒヤヒヤするんだよ。
 首でもな、もう少し余裕持たせて縛るならまだいいんだけど、
 あきらかに鎖骨の上まで縄入れて腕あげさせたりするだろ、あれ、下手したら本当に危ないんだよ。
 女の子の方は軽く首絞められて気持ちよくなっちゃってるから気が付かないだろうけど
 うっかり変なとこに入ったらと思うと気が抜けなくて見ててもすごく疲れるんだよ。」


ああ

なるほど・・・


加賀さん、主催者ですからね。
問題も起こしたく無いだろうし、そりゃそういうことは気になるよね。


たしかに、あんな風に縄に陶酔してたらそんな事故も起こらなくも無いのかもね。
私だって、以前普通に縛られてただけなのに、
縄を解いた途端に全身にぶわーと寒気がして、びっくりした事があるんですよ。
ああ、意外と血行が阻害されてるものなんだな、と。
本人も気づかない程度に、意外と身体には負担がくるもんなんだな、と。

縄を解く、といえば

トモさんに縛られた時に、彼がこんなことを言っていました。


「俺、縛るのよりも解くのが、好きなんだよね。」


なんでですか?
と私が聞いたら、彼はにやりと笑って


「エロいから。」


と 答えました。



・・・てゆーか


・・・えろいのはお前だよ・・・。


と 思いながら、嬉々として縄を解くトモさんを眺めながら
Sや緊縛と一言では言っても、色んなSや縛りがあるんだなあと

そりゃみんな人間なんだから色々あって当たり前なんですけどね。

結局はその向かい合ったひとりの人間と、遊んでるってことなんだよな。