2011/08/04

失恋のはなし


「彼氏と別れた。辛くて何もやる気しないっ。仕事もしたくないっ。」


・・って言ってホントに仕事を休んでる友人、美和子ちゃん。


まあ、気持ちは分かる。


失恋って生命の危機の次に重大な緊急事態だから!
「そんな・・たかが失恋くらいで」なんて言ってる奴らは、
単純に本気で人を好きになったことが無い人たちなんだから、そんなの気にすんな!
仕事くらい休め!


・・って言ってなぐさめてあげたいところだけど、
今現在、人生における緊急事態の真っただ中にいる彼女には何言ったって聞こえないんです。
せめて落ちるとこまで落ちれば 後は昇るだけで 気も楽になるはず。
今は ほうっておくことにします。




でも、それだけ落ち込んでるってことは、それだけ好きだったってことですよ。


恋に落ちる時って、
本当にその言葉のごとく 名も知らぬ大海に いきなり突き落とされるような衝撃がありますよね。
しかも、否応もなく、理不尽に。


どっぷーーん って、いきなり落とされてみたら、


あれ?


なんかまばゆいばかりの美しい魚がいっぱいいたり、
差し込んでくるのはキラキラ光のスペクトル、
水の中で乱反射して、なんだか自分が光になった気分!
ああ、こんな世界があったのか!!みたいな
外から見てるだけじゃ分からなかったこの世のものとは思えない輝かしい世界が広がっているわけですよ。
たまにクジラとか遭遇しちゃったりしてね。
もう、ナチュラルハイの極みです。


まあそして時には荒波に揉まれたり 岩場に叩き付けられたり、
思いがけなくクジラに食べられちゃったりするわけです。


否応も無く。


結局、恋に落ちるって、全てが理不尽。


始まりから終わりまで、結局は自分の一存ではどうにもならないことばかり。


全てが想定外で、自分の範疇を超えているんです。


そんな、すごい力に翻弄されているわけだから、
そりゃあ 落ち込まないわけないんですよ。


失恋って、「アイデンティティ・クライシス(自己喪失)」なんですよ。


「自分」という存在を定義づけるものを失うことで、
築き上げて来た「自分」という存在が、一度そこでバーンと崩壊しちゃうんですよね。


粉々に崩壊した自分を、立ち直るためにまた一から組み直していくわけですから、
そりゃあ 痛手が大きければ大きいほど、修復作業も困難を極めるわけで。


修復作業中は、人にもよりますが、黙々と作業に耽るに限ります。


自分が落下した美しくある時には恐ろしい大海を心で反芻しつつ、


そんな大海原を泳ぎきった己の精神と肉体を 褒め 愛でながら、


もうちょっと時間が経てば、そんな美しい海を知った、美しい自分の存在に、気づくはず。


それが理不尽であればあるほど、美しい経験になるはずです。


こういっちゃあなんですが、


意外とこういう経験をして無い人って多いんですよ。
やろうと思ってできることじゃないですから。


してる人だって、多分人生で一回か二回か、せいぜい三回ですよ。
それ以上は身体が持たない気がする・・。


まあ、「もう一回くらい、クライシスしてもいいかな。」


・・なんて なかなか 私も 言えないですけどね。