2017/03/14

沈黙

 
 
今回は全然、美しくない話をします。
 
 
「ウチのサロンに変態の男がきてさ」
 
 
マッサージ師のフジ子ちゃんが言った。
 
以下は素朴系美人マッサージ師(やらしくないやつ)のフジ子ちゃんと私マエダ、友人の恵さんとのある日の会話である。
 
 
「ウチ、デコルテ込みのヘッドマッサージメニューがあってさ、それは、男性客も施術可にしてるのね。で、そのメニューで予約してきた新規のカンノって男がいてね、まあフツーに予約してきて、店に来るじゃん?で、デコルテマッサージだからさ、通常は上半身だけ脱いでもらえればいいわけなんだけど、部屋に通した途端、あれよあれよという間に服脱ぎ出して、あっという間にちっちゃなフンドシ一枚になってさ...」
 
 
「え、なぜフンドシ...?」
 
「...パンツじゃなくてフンドシか...」
 
 
「え?...あ、そうそう、なんかね、すごいちっちゃなフンドシ一枚になってさ......いえ!デコルテだけなので脱がなくていいです...!って言おうとしたんだけど、言い終わらないうちにすでに全部脱いでいた。」
 
「...既に脱いでいた!有無を言わせない脱ぎっぷり。脱ぐの早いのね。」
 
「でさ、店には私ひとりだし、そこで揉めるのも怖いじゃん?だから、まあ白かクロかっつったら明らかにクロの変態男なんだけど、とりあえずフンドシはつけてるし、もうこんな面倒な客さっさと終わらせちゃおうと思ってマッサージ始めたんだけどね。」
 
 
「そういう変態男ってさ、施術中ってティンコ立ってんの?」
 
「途中で半立ちになってた。てゆーか、フンドシがちっちゃ過ぎて微妙に見えちゃったんだけどさ、......その男のティンコが、すごい小さかったんだよね。...マイクロペニスっていうの?親指の先くらいしかなくてさ...」
 
「え、てゆーか、眠ってるティンコってなかなかにマイクロじゃない?あ、起きてる時で親指の先くらいだったの?」
 
「半立ちくらいの時だよ、三センチくらいしかなかった。」
 
「...それはなかなかにミクロね...」
 
「だからさ、...勿論、そういう変態はムカつくし許せないんだけど、マイクロな彼なりにフツーのセックスじゃない部分で性的な部分を満たそうとしているのだろうか...とか、あとで色々考えちゃったよ...」
 
 
「つーかさ、おっきいとか小さいとかよくいうけどさ、アレッて結局なにを基準に言ってんだろうね?長さの平均が14センチとかって何かで見たけど、結局は身体の大きさとの兼ね合いっていうか、小柄な男にはちっちゃめのがついてて然るべきだし、体が大きい男には大きめのがついてるっていうのが、まあ違和感ないっていうかね。体との比率の問題だと思うんだけど。まあ、実用的ってより視覚的な話だけどね、それは。つーか、大きさが実用的でない場合はもうカッコいいとか悪いとかいう問題じゃないからな。身長が大きいと小さいとかよりも実用の目的の幅が狭くて明確なわけだから。」
 
「そのフンドシ男は、背は160センチくらいで小柄ではあったけどね。っていうかさ、そのくらいちっちゃいティンコ、見たことある...?」
 
「そこまでミクロなのは、ないわ。だけど、ちっちゃいっつーか、細いのはある。昔付き合ってた男で、肩も背筋も腰もスッゴい筋肉が付いてるガッチリした体つきの男でさ、しかもイケメンだっただけに、予想外に細かった時はなんか悲しかったけどな。なんか、いかにも男性ホルモン多そうっていうか、そういう男だったからさ…だから、なんつーか私としては、外見とのギャップがないティンコがいいと思うわけですよ......もっと外見が細くてナヨっとしてる男のが、細くてもまあなんとも思わないっていうか......体が小さい人にでっかいのがついてても不恰好で気持ち悪いし、それと同じ理由で大きい体の人にちっちゃなのが付いててもカッコ悪いし、結局顔のパーツのバランスと一緒だよね。視覚的にベストな比率ってゆーのかあると思うんだよ、私も今まで付き合った男の人に限っての話だけど、パッとみて体との比率的に大きいか小さいかはわかるんだけどね。具体的にその比率を数字にしてみたことはないけど、多分できると思うよ。やってみようか。」
 
 
「...ティンコの数値化か...」
 
「ほら、基準が曖昧だからこそ悩んじゃうってのもあるかもしれないじゃん?女性の顔とか外見に対する評価と一緒でさ、個性がどうのとか言って主観的にしか評価できないってのも面倒な場合があるんじゃないの。」
 
 
「なんか男の人って、強迫観念的に大きいとか小さいとか気にするよね。ていうか、大きいとか小さいとかいう以前に、大きかろうが小さかろうが好きな男以外のティンコは想像するのも嫌だし、気持ち悪いだけなんだけどね。そこらへん、わかってんのかね。」
 
「どうなんだろね、たしかに男の人って、女の私には理解できないほどに、ティンコにプライオリティを置くよね。つーか、問題はティンコの大きさなのだろうか。」
 
「つーか、彼らにはティンコ以外に問題がないとでも思っているのだろうか。」
 
「…まあ、それはお互い様の話だけどな。色んな意味で。」
 
「よくいうけどさ、大きければいいってものでもないけどね。小さすぎるのも気持ちよくないから嫌だけど、大きいことを誇ってる男のほうが、私は嫌いだけど。あれはもうバカバカしくて引くよね。」
 
「だからさ、小さくてもいいってもんでもないじゃん?だから、大きいとか小さいとかの問題じゃなくて、なんでそういうことに変なプライドもってるわけ?......っていう。こちとら総じてそのプライドを傷つけないように気を使い続けてるわけでさ......「別に大きさとか関係ないよ!」っていうのは勿論真実でもあるんだけど、女の思いやりっていうか、気づかいって面も少しはあると思うんだよね。デリケートな男に対してのさ。ホラ、デキた男の人がさ、30半ばも過ぎた私のような女に「綺麗」とか言ってくれるような、そういう思いやりと同じようなもんだと思うわけよ。まあ、だけど、それはそれとして基本的に男のティンコに関してはなにも言わぬ語らぬの姿勢を取らなければならないので、面倒くさいなっていうか......まあ、その昔のティンコ細かった彼は、たまに酔っ払った時とかにいじけて、どうせ俺なんてアソコも小さいしさ...とか言っちゃうような可愛い男だったから、アハハ!そうだねー!とか言い合えて楽しかったけどね。」
 
 
「あ、でね、一応さ、その変態男の情報だけは共有しとこうと思ってね。これが、その変態の予約時のメールアドレスと電話番号。」
 
「あ、その電話番号、今、電話番号の検索サイトで検索してみたら結構検索されてるから常習かもね。」
 
「え、なにそれ。そんな検索数がグラフででるサイトとかあるの!」
 
「それくらいの情報があれば、ネットオークションの取引先とかもわかるよ。ホラ。出品物からして、エロ系のオタクじゃない?あ、ブログも見つけた。コスプレグッズとか車バイク関連のパーツとか、ヤフオクでの落札記録と一致してるから、やっぱりこいつだと思うわ。大阪在住だね。」
 
「...そうか、やっぱりそうやって、女性が一人で施術してるサロンとか巡ってるのかな...。死ねばいいのに。」
 
「もし、こいつが今度はうちに予約してくるようなことがあったらさ、予約の電話段階でちゃんと言っておいてあげるよ。『あなたは前回、某マッサージサロンで陰茎および陰嚢つまりティンコアンドキンタマを露出させた疑いがあるがそれは事実か?執拗に性的サービスを要求することやセクハラ的発言、行為で施術者を侮辱、嫌がらせをするような行為があった場合には抗議や慰謝料、損害賠償の対象であり、法的対応も検討している。事実関係を確認したいが、陰茎および陰嚢、つまりティンコアンドキンタマを露出させたのか?』と、ミニマムティンコを、ビビッてもっとミニマムに縮こまるほどに威圧的にずっと執拗に喋り続けてやるよ。」
 
 
「ティンコで思い出したけど」
 
「...今日はティンコの話ばかりか。」
 
「前にさ、もんのすごく暗がりから「ほら、チンチン」って言われたけど、人が立ってるのかすらわからないくらいの暗がりで何も見えなかったのでとりあえずガラケーで写メろうと思って声がした方によってって、カシャッ!ってしたらすげー勢いで人が逃げていったんだよ。ガラケーだったこともあり、写真は真っ暗で何も写ってなかったけど。」
 
「露出狂か。そんなに見せたいんなら、堂々と写真に撮られなさいよ!...って思うよね。つーか、なんなの?見せたいけど、写真はNGなの?」
 
 
「つーか、あれよね。ある意味ティンコを男のプライドのようなものとしてこだわってるのに、評価されるのは怖いのよね。体との比率的に平均値よりやや短めくらいですね!だけどフツーにセックスするなら気にならないくらいかな!?とかハッキリ言われたら萎えちゃうんだろうね。けなしてるわけじゃないのにね。きっと例え妄想であっても女に対するティンコの優位性を信じたいんだろうね。そうじゃないと、女に立ち向かえないんだろうね。まあだからさ、たとえ好きな男が小さいことでいじけてても、「小さくたっていいじゃない!たとえティンコが小さくたってあなたは素敵。」とか言っても、男は頑張れないんだろうね。なんかよくわかんないけど、やっぱりこういう話は、その変態男みたいのは別として、好きな男に対しては、良かれと思ってもアレコレ言わない方がいいんだろうね。愛情による沈黙っつーか、まあ思うところは色々あるけどさ、ほら、あれだよね。立たせたかったら黙ってろ、みたいな。」
 
 
なんつって、もう書いちゃったけどな。