2011/11/30

三神さん


私の友人の中で、一番、私が色んな事をしゃべり尽くしている人。


78歳のおじいちゃん、三神さん・・・。


コレだけ歳は離れてるんだけど、妙に気が合うんですよね。
仲良くなるのに、年ってホントに関係ないんだよなあ。


意外とお喋りしても毎回、話題は尽きないんですよ。




「三神さんってさ、すっごい『カン』がいいよね、宝くじとか買わないの?」


この日はいきなり『カン』の話になりました。
話題を振ったとたん、ぴしりと即答の三神さん。




「買わない。他のギャンブルに比べて、どう考えても割が悪いんですよ、宝くじは。
 第一にね、ギャンブルっていうのは運もあるけど、集中してやらなきゃだめなんです。
 惰性でやったら絶対負ける。競馬でも麻雀でもカジノでも、自分が集中できる時間を
 決めて、その時間は集中して、やる。そうすれば、結構いいとこまで行くんです。
 私の場合、例えばカジノであれば、集中できるのは30分が限度。勝ってても負けても、
 集中できる30分の中で、集中して、遊ぶんです。」




へええ〜〜。


よくわからないけど、勉強になります。


なぜ私がこの三神さんに『カン』の話を振ったのかといいますとね、
この三神さん、自他共に認める、類い稀なる第六感と勝負強さの持ち主だからなんですよ。


何十年前の話でしょうか、
バブル経済の崩壊を予見し、当時でっかく商っていた商売を持ち前の潔さで一気にたたんだことで
一財産を築き、現在まで悠々自適な生活をおくるこの三神さん。


カンの良さはこの一見にとどまらず、
まあ、ちっちゃな話ですが、私が「今日はケーキが食べたいな〜〜。」とか思うと
ケーキ片手に遊びに来てくれたりとか、そんな感じでいつも絶妙に空気を読んでくれる人なんです。


すごいでしょ?


最近思うんですけど、
そういう『カン』っていうのは、自分の進むべき道を覚悟を持って見据えた人にだけ、
与えられるものじゃないかと思うんですよ。


『カン』を授かるのにはまず、周りをただ見渡す前に、自分が進むべき道は何なのか、
まず自分自身を見つめる作業が必要なのではないか と。


まあ、ケーキとかそれくらいのもんならもっと何気ないものだと思うんですけどね。


まあ 場合と程度によりけりってことで。




「宝くじの話が出たから折角ですけど、マエダさん。」


「はい?」


急に改まる三神さん。


「実はこの間ふと思ったんだけどね、宝くじ、あなたのお母さんが買ったら当たる気がするんですよ。」




・・・・




ジャケットの内ポケットから黒い皮の財布を取り出し、
おもむろに一万円札を取り出す 三神さん。




「コレで、あなたのお母さんに、宝くじ、買わせてみて。」




・・・




一万円札を受け取る、マエダ。
ちなみに、三神さんと私の母は実際に会った事は無いんです。
ただ、私がよく母の話をするので、三神さん自身は妙に母のキャラクターに好感を持っているようなないような・・・。




「私が買っちゃ、ダメですか?」


「ダメ。」


「じゃあ、宝くじ売り場、ドコがいいか私が調べてみよっかな〜。」


「ア〜〜ダメダメ!!あなたがやっちゃだめです。お母さんの好きなとこで買わせなきゃ。」


「ってゆーか、私も母も、産まれてこのかた宝くじって買った事無いんですけど・・。」


「売り場でね、連番10枚とバラ20枚って言って買って。そしたら大体そのくらいの金額でしょ。」




なにを企んでいるのか、なにやら楽しそうな三神さん・・・・。




「な? なんだか たのしくなってきただろ?」




むむ たしかに・・・。


いやなんだかわかりませんが、私もこの段階で無性に楽しくなってきてしまいました。
人に、宝くじを買わせてみるという、この不思議な感じ。
「この人に任せてみたら、どうなるんだろう?」っていう、
「この人」を信用する感じとでもいいましょうか。
「この人が当たったら、いいよなあ。」っていう感じも勿論ありますよね。
この一万円という金額に対しての重さは勿論人それぞれ、
三神さんにとっては小さいものかもしれませんが、
いかんせん この三神さん、気にいったものに対してはものすごく気前がいいけど、
出したくないものに関しては一銭だって身銭を切らない、結構ケチっちゃケチですよ。
そんなお人ですから、なにかしら楽しいことを予感してのことなんでしょう。




「じゃあ、母に買わせてみますけど、もし当たったら、どうするんですか?」


「うん、ホント〜〜に、でっかく当たった時にだけ、教えてくれればいいよ。」


 ハイ、 わかりました・・・。






さて、 どうなるか。
なんか、ここに書いちゃった手前、
曲がりなりにもおもしろい結果であって欲しいと、
変なプレッシャーを感じるマエダです。