昔からとてもスキな小話がある。
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『葉っぱの絵を描いてみて』
と、私は誰かに言われる。
私は手元にあった紙に、自分のボールペンで葉っぱの絵を描く。
それを見て、誰かは言う。
『葉っぱの絵を描いてみてと言ったら、あなたはこの絵を描きました。
だけど、実際には、この絵と同じ葉っぱはこの世界のどこにも、無いですよね?
それなのに、あなたは、なぜ、葉っぱ、といわれて、この絵を描いたのですか?』
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その話を聞いたとき、
初めて人間というものが世界をどう解釈して日々を生きているのかが、解った気がした。
それは別に良いことでも悪いことでもなく当たり前のことだから
この話を聞いた時に何かが心に引っかかりピンとくる人もいれば
だからなに?とその当たり前さに不思議に思う人もいるだろう。
この葉っぱの絵のように
世界はきっと自分自身で、作り上げてしまっている。
自分で創ることもできれば、自分で壊すこともできる世界を
きっと誰もが持っている。
作り上げた世界で自分を縛るのも、自分。
絶えず変わり続ける世界を見つめながら、
自分を壊し、新たに創り続ける、それも、自分。
たとえば自分が疲れたとき
せめて自分の曇った眼で、
葉っぱの碧さを、見失わないために。